私は在日韓国人です

『私は在日韓国人です』

張　景愛（経済学部　3年）

  いきなりですが、タイトルにもある通り、私は在日韓国人です。もっと詳しく言えば、私は在日４世であり、曾祖父母が日本に渡ってきて今に至ります。これから書く文は、在日韓国人の歴史についての文ではなく、また、在日韓国人とはこういう人達だということを述べる文でもありません。ちょっとした私の紹介であり、日本に沢山居る在日韓国人の中ですこんな人も居るんだ、思って頂ければ嬉しいです。
  私は日本で生まれ、日本の食べ物を食べ、また、日本語を母語として育ってきました。そして、韓国には一度も行ったことがありません。こういったことを言うと、不思議に思う人が多々います。その人達は、おそらくこういった疑問を持つでしょう。私は日本人と韓国人のハーフではないのに何故日本に住めるのか、また住んでいるのか。あるいは、私の母語が何故ハングルではなく日本語なのか。そして、私は何故韓国に一度も行ったことがないのか、といったことです。
  まず、私が何故日本に住めるのかについてですが、それは、私が“特別永住権”を持っているからです。“特別永住権”についての詳細は、歴史について触れることになるので、ここでは伏せておきます。簡単に言うと、言葉そのままですが、日本に永住する権利があるということです。また、何故日本に住んでいるのかについてですが、これは私と私の家族の生活基盤が日本にあるからです。つまり、私の家族は曾祖父母の代から日本に住んでおり、私の生活の拠り所の全てが日本にあるからです。(逆に言うと、韓国にはありません。)
  次に、私の母語が日本語である理由ですが、それは、私も私の家族も日本で生まれ育ったので必然的にそうなります。もちろん、かつては韓国(当時の朝鮮半島)に住んでいた曾祖父母は、朝鮮語まじりの日本語で会話をしていました。しかし、コミュニケーションする相手が日本語を話す日本人が多い以上、日本語が主になり、便利になってきます。
  最後に私が韓国に一度も行ったことがない理由ですが、単に行かなかっただけです。私にとって韓国に行くということは、馴染みのある自分の国に行くと言うより、どちらかと言うとですが、韓国旅行に行くといった感覚の方が強いです。このことから、単に行かなかったという言葉に深い意味がないということが分かると思います。勿論、韓国に言ってみたい気持ちはありますし、近いうちに行こうとも思っております。
  ここまでの話を聞くと、私は日本人と変わらないのではないか、と思われる人も多いでしょう。確かに、私は生まれた時から日本に住んでいて、韓国に行ったこともなく、家での会話も専ら日本語(細かく言えば、呼び名だけ韓国語です。)なので、そう思われて当然だと思います。
  では、ここからは、何が日本人と違うのかについてのお話をします。以下の項目は、あくまでも私の私の場合ですが、思い当たることについていくつか挙げてみます。
  まず、当たり前ですが、国籍が違います。ですので、私は、“外国人登録証明書”を所持しなければなりません。そして、法律上は常にこれを携帯することとなっています。また、パスポートも表紙に“大韓民国”、とハングルで記された韓国のものになります。さらに、海外(韓国を含む日本以外の国)に行く際は、“再入国許可書”が必要です。これは、私が永住権を持っていても、あくまでも韓国人である為、必要となるのです。つまり、一度日本を出た際は、再び戻ってきた時に、自分の国ではない日本に再入国するために許可が必要であるということです。そして、私には選挙権がありません。さらに、気持ちの面でも少し違いがあるかもしれません。例えばちょっとしたことですが、韓国料理が流行ったりすると、嬉しい気持ちになります。また、最近のK-POPの流行に対し、少し誇らしい気持ちになります。
  ここまでの話の中で、私は日本人と変わらないのでは、と思われる部分や、一方で、やはり日本人とは違うのでは、と思われる部分の両方があったと思います。実際、私は、自身の在日韓国人としてのポジションは非常に微妙であるように思います。
  最後に、在日韓国人である私の考えや意見について述べます。先程も述べたように、私は、自身の在日韓国人としての立場は微妙であると思います。韓国と日本の、どちらにも属しているような、

どちらにも属していないような、相反する感じがあります。例えば、私は、オリンピックでは両方の国を応援します。こんな私に対して、愛国心がないとか、おかしいと言う人もたまに居ますが、私は両方応援したいのです。私には、韓国が勝っても、日本が勝っても嬉しいのです。何故なら、日本は私の生まれ育った国ですし、韓国は、私の祖国だからです。そして、私なりにですが、両方の国の良いところも理解しているつもりです。私は、自身が在日韓国人という微妙な立場にあるからこそ、好きなもの、応援したい人が沢山存在することを、有り難く思っています。私は、日本も韓国も大好きなのです。