エッセイ

着物コンテスト:特選 『国境を越えた帯』

飯田 ペギー (2008年 アメリカ研究科修了)


  私はインドネシア出身の留学生で現在は社会人として日本で活躍している。これから述べる帯にまつわるエピソードは私が日本に留学する前の話。
  時は平成11年、私は16歳の高校2年生だった。日本語を学校で学んでいた私は日本語が上達できるようにインターネットのメール友達公募サイトに入会し、作成した自分のプロフィールに日本人のメール友達を募集していると書いた。入会してから1週間ぐらい経った頃に日本人の女子高生からメールが来た。辞書を片手に一生懸命に日本語でメールを返信した。メールのやり取りをして1ヶ月経った頃に彼女は手作りの浴衣を送ってくれた。送られてきた箱に着付け方の説明書が入っていたので、それに従って着付けに挑んだ。
  一番苦労したのはやはり帯を結ぶ事だった。浴衣とセットで送られてきた帯は最近よく見られるワンタッチ帯ではなく通常の帯だった。いくら強く結んでも何故か帯が緩んでしまう。昼食も食べずに3時間かけてやっと結べた帯の出来前は、どこからどうみても綺麗とはいえない蝶々結びだったが、精一杯だった。早速この事をメール友達に報告した。彼女に「よく頑張ったね」と褒められた。
  ワンダッチ帯ではなく、通常の帯を送ってくれた理由をメール友達に尋ねてみた。その時に彼女はワンタッチより通常の帯の方が綺麗に見えるからと答えた。しかし、彼女が本当に伝えたかったのは帯の見た目ではなく、帯を結ぶ大変さを実感したことで出来上がった時に達成感があるからだと思う。
  日本へ来て今年で9年目。和服が大好きだという気持ちは今でも変わらない。大学の卒業式に袴をはき、大学院の卒業式に成人式の時に着れなかった振袖を着た。それだけではなく、去年は自分の結婚式で白無垢を着た。毎年ではないが、夏祭りに行く時は浴衣を着る。私は日本人ではないが、日本人に負けないぐらい和服が大好き。母国ではなく、着物を自由に着られる日本人に生まれればよかったと今でも思っている。
ペギー(後列、中央)
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